
メモリ大手MIcronの業績を2013年から辿って行って見ましょう!
BU毎の売上推移を見てみると、DRAMやNANDフラッシュの販売価格の推移が非常に重要であることがわかってきます。
それでは順を追ってMicronを理解していきましょう。
概要
Micron Technologyは、コンピュータメモリ(DRAM)とコンピュータデータストレージ(NAND)を生産するアメリカ企業です。
Micronは、DRAM、NAND、NORの3つを手がける唯一の企業です。
項目 | 内容 |
---|---|
本社 | アイダホ州ボイシ |
設立 | 1978年 |
主要製品 | コンピュータメモリ(DRAM)とコンピュータデータストレージ(NAND) |
メモリおよびストレージ技術 | DRAM、NAND、NOR |
業績の推移
下の図はMicronの2013年から2022年までのBU別 売上(左図)・純利益(右図)を表したものになります。
まず目立つのが売上・純利益の乱高下ですね。
これは所謂メモリ・サイクルと呼ばれるもので周期的にアップダウンを繰り返していますね。
メモリ市場は価格の高騰と下落を繰り返しており、需要と供給のバランスが不均衡になりがちです。
メモリ市場の特徴として全メーカーが価格を一気に下げて、全社負けの状態になることもしばしあります。
BU毎に2013年から2022年までに何が起こっているのかを確認していきましょう。

メモリ市場全体の遷移を知りたい方はこちらをご覧ください。
BU構成
MicronのBUは大きく分けて4つの構成になっており、それぞれが下の図のような割合を占めています。
- CNBU(Compute and Networking Business Unit)・・・45%
- MBU(Mobile Business Unit)・・・24%
- SBU(Storage Business Unit)・・・17%
- EBU(Embedded Business Unit)・・・15%
これらのセグメントが何を扱い、どのような業績の推移を辿ってきたのかを探っていきましょう。

CNBU

Micron全体の45%の売り上げを占めるのがこのCNBUです。
CNBU(Compute and Networking Business Unit)は主に5つの領域を対象にしたBUで非常に幅広い範囲をカバーしています。
- クライアント
ターゲット:商用および消費者向けPCユニット
製品:DRAM(DDR4、DDR5、LPDDR4、LPDDR5) - クラウドサーバー
ターゲット:AIおよび高性能コンピューティングなどのデータ集約型ワークロード
製品:DRAM(DDR4,5) - エンタープライズ
ターゲット:デジタル変革としてハイブリッドクラウド&エッジソリューション
製品:DRAM(DDR4,5) - グラフィックス
ターゲット:AI、仮想現実および拡張現実、プロフェッショナルデザインなどのアプリケーション
製品:GDDR6 - ネットワーキング
ターゲット:5Gインフラの展開、データセンターネットワーキング
製品:DRAM(DDR4およびDDR3)
下の図はCNBUの売上(左図)と純利益(右図)の推移を表した図になります。
CNBUの売上および営業結果は、DRAM製品の平均販売価格、ギガビット販売量、ギガビットあたりのコストに大きく影響され、業績推移の原因はそれぞれ下記の通りになります。
- 2016年にかけて:下落
PCセクターの弱さが続いた結果、平均販売価格が低下したことが主な原因で、2015年と比較して33%減少 - 2018年にかけて:急騰
強い市場状況と需要により価格と販売量が増加したため、CNBU全体で77%増加 - 2019年にかけて:暴落
厳しい市場環境により価格が低下したため、35%減少 - 2022年にかけて:上昇
ビット出荷量の増加、平均販売価格の上昇、製造コストの削減、およびMTU未使用コストの低下

このようにCNBUは主にDRAM市場全体の平均単価と出荷台数に大きな影響を受けることがわかります。
特に2016年はPC市場の冷え込みによるDRAM単価の暴落や2019年にはDRAMの需要と供給バランスの変化から一気に収益を悪化させています。
もう少し詳しく知りたい方は下記リンクより詳細をご確認下さい。
MBU

それでは二つ目にMicron全体の24%を占めるMBUについて見ていきましょう。
MBU(Mobile Business Unit)は主に1つ携帯端末の市場をカバーしています。
主な対象製品と販売製品は下記の通りです。
- スマートフォン
ターゲット:スマートフォン・タブレット・携帯電話
製品:NAND,DRAM,UFS,eMMC
下の図はMBUの売上(左図)と純利益(右図)の推移を表した図になります。
CNBUと比べて収益悪化の際にも落ち込み方が非常に少ないですね。
スマートフォンの出荷台数は増加傾向を辿っており、DRAM,NANDの価格下落はあれど、CNBUほどの影響を受けなかったためと考えられます。
- 2016年にかけて:下落
平均販売量は増加したが、平均販売価格がそれを上回る下落 - 2018年にかけて:急騰
スマホのメモリコンテンツが増加し、NANDとDRAMの価格・出荷数の増加 - 2019年にかけて:微減(CNBUは大幅減の年)
DRAM,NANDともに価格が下落したが、スマホ向け出荷数の大幅増で下落を軽減 - 2020年にかけて:急落
Covid-19による価格低下の影響で、売上に比べて純利益大幅減 - 2022年にかけて:増加
携帯端末の需要が伸び、DRAM,NANDの価格も向上

SBU

それでは三つ目にMicron全体の17%を占めるSBUについて見ていきましょう。
SBU(Storage Business Unit)は主に下記3つの市場をサポートしています。
商材は主にSSDになります。
- エンタープライズおよびクラウドSSD
ターゲット:データセンターワークロード
製品:5300、7400、9300シリーズSSD - クライアントSSD
ターゲット:パーソナルコンピューターOEM
製品:2450、3400、および2210シリーズのクライアントSSD - 消費者向けSSD
ターゲット:一般消費者
製品:Crucialブランド MX500、BX500 SATA SSDおよびP2 PCIe SSD
下の図はSBUの売上(左図)と純利益(右図)の推移を表した図になります。
売上は2018年にかけて順調に増加して、2019,20年に大幅下落、2022年にかけて再度売上が復活していますね。
一方純利益の乱高下が激しく、同じ売上でも純利益がくが様々です。
これはNANDの価格により、物が逼迫して数は売れないが高利益で売れる場合は売上が小さいが利益は大きくなり、NANDの供給が過多になり価格が低下すると売上こそ大きいが、純利益は低下するという傾向になっている。
- 2016年にかけて:売上 微減、純利益 激減
販売量は増加したが、平均販売価格が16%も減少した - 2018年にかけて:高騰
クラウドおよびエンタープライズの販売量増が販売価格の下落を相殺し上昇 - 2019年にかけて:大幅下落
価格の低下により売上が24%減少も減少し、純利益も大幅減 - 2022年にかけて:大幅増
出荷台数と平均販売価格の増加

EBU

それでは最後にMicron全体の15%を占めるEBUについて見ていきましょう。
EBU(Embedded Business Unit)は主に下記2つの市場をサポートしています。
昨今流行りのIOTから自動車まで幅広くセグメントをカバーしていますね。
- インダストリー
ターゲット:産業IOT市場(マシン間通信、工場自動化、輸送、監視、小売り、およびスマートインフラ)
製品:DRAM,NAND,NOR(DDR4,3、NAND、NOR) - 自動車
ターゲット:自動運転の進歩や先進運転支援システム(ADAS)、インフォテインメントシステム
製品:DRAM、NAND(DDR3,LPDDR2 DRAMなど)
下の図はSBUの売上(左図)と純利益(右図)の推移を表した図になります。
EBUの特徴は売上が順調に右肩上がりである点です。
これはIOT産業とAutomotive産業の堅調な成長が見て取れますね。
一方純利益は売り上げの伸びに対して価格の下落などで一気に業績を悪化させています。
- 2018年にかけて:売上/純利益 増加
DRAM,NANDの販売価格増加 - 2019年にかけて:売上 増加、純利益 大幅減
DRAM ,NANDの販売量は増加するも、販売価格が大幅下落

DRAM,NANDのシェア
下記図はDRAM,NANDの売上に占める割合を示しています。
売上全体の70%強をDRAMが占めており、DRAMの価格動向が非常に大きな影響を与えることがわかります。
特にCNBUはDRAMのみの扱いであり、このセグメントが担当するサーバーやグラフィック向けのDRAMの販売価格が非常に重要になってきます。

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